主な知財用語について、弁理士の佐渡がなるべく簡単にわかりやすく説明します。
知的財産とは、知的活動によって生み出されたアイデアや創作物等の総称です。
・発明=新しい技術的なアイデア
・考案=新しい技術的なアイデアのうち、物品の形状、構造又は組合せに関するもの
・意匠=物品等のデザイン(外観)
・商標=商品やサービスの名前やマーク
知的財産権とは、知的財産を保護するための権利です。
発明とは、新しい技術的なアイデアのことをいいます。
発明であっても、特許の対象とならない発明もあります。
特許法が適用される発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」です。
したがって、次の発明は特許法上の発明とはいえず、特許を受けることはできません(特許庁資料)。
(1) 自然法則自体 (例:エネルギー保存の法則)
(2) 単なる発見であって創作でないもの (例:X線自体の発見)
(3) 自然法則に反するもの (例:永久機関)
(4) 人為的な取り決めなど自然法則を利用していないもの (例:ゲームのルール自体)
(5) 技能など技術的思想でないもの (例:フォークボールの投球方法)
特許とは、発明(新しい技術的なアイデア)を守るために、国によって付与される特許権のことです。特許権を付与すること、特許制度、特許法を指すこともあります。
特許権とは、発明(新しい技術的なアイデア)を保護するために国によって付与される独占的権利です。
特許権を有するもののみが、その発明について独占的に実施することができます。
「発明」が特許されるための主要要件(特許庁資料より) |
(1) 「発明」であること(発明の成立性)
特許法が適用される発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいいます。
したがって、次の発明は特許法上の発明とはいえず、特許を受けることはできません。
1) 自然法則自体 (例:エネルギー保存の法則)
2) 単なる発見であって創作でないもの (例:X線自体の発見)
3) 自然法則に反するもの (例:永久機関)
4) 人為的な取り決めなど自然法則を利用していないもの (例:ゲームのルール自体)
5) 技能など技術的思想でないもの (例:フォークボールの投球方法)
(2)「産業上利用できる発明」であること ・ 産業上利用できない発明は特許保護の対象となりません。なお、ここでいう「産業」は、広義に解釈され、製造業以外の、鉱業、農業、漁業、運輸業、通信業なども含まれます。
・ 産業上の利用性を満たさない発明の主な類型としては、人間を手術、治療又は診断する方法(いわゆる「医療行為」)があります。
(3) 「新規性」を有すること ・ 特許権が付与される発明は新規でなければならなりません。
(4) 「進歩性」を有すること ・ 新規性のある発明であっても、公知技術に基づいて通常の技術者が容易に発明をすることができたものについては「進歩性がない」として特許権が与えられません。
(5) 発明が明確に記載されていること(明細書の記載要件) ・ 明細書は、発明の技術的内容を公開するための技術文献及び特許発明の技術的範囲を明示する権利書としての役割があり、明細書には、通常の技術者が実施可能な程度に発明を開示するとともに、特許による保護を求める範囲をできるだけ明確に記載することが求められます。
・ なお、明細書のうち、特許による保護を求める発明の範囲を記載する部分を「特許請求の範囲」(クレーム)、発明の具体的内容を開示する部分を「発明の詳細な説明」といいます。
・特許権が付与される発明は新規でなければなりません。
新規性とは、未だ世に知られていない新しさのことをいいます。
つまり、特許受けるためには、その発明は、非公知、非公開でなければなりません。
※ 発明者の意に反しまたは発明者の行為に起因して公開された発明については、公開された日から1年以内に新規喪失の例外規定の適用を受けて特許出願する必要があります。
・特許権が付与される発明は進歩性のあるものでなければなりません。
進歩性とは、その発明が公知技術から容易には思いつかないていどのものであるということです。
・ 新規性のある発明であっても、公知技術に基づいて通常の技術者が容易に発明をすることができたものについては「進歩性がない」として特許権が与えられません。
特許申請とは、発明について国(特許庁)に対し特許権の付与を求める手続をいいます。特許法では、特許出願といいます。
特許申請(特許出願)は次の書類を特許庁に提出することによって行います。
・願書、明細書、特許請求の範囲、図面
出願審査請求とは、特許出願した発明が特許されるべきものであるかどうかの審査を、特許庁に対して要求する手続をいいます。
特許出願しただけでは審査はされません。
特許出願した発明が特許されるべきものであるかどうかは、特許庁の審査官によって審査されなければなりません。
特許出願しただけでは審査はされません。その審査を要求する手続きが出願審査請求です。
※ 出願審査請求を行うための費用(主に特許印紙代)は高額ですので、出願審査請求を行うかどうかは、アイディアの価値を十分に見極めてから決めるのが得策です。
※ 特許出願から3年以内に出願審査請求をしない場合、その特許出願は取り下げたものと見なされます。
早期審査とは、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う制度のことです。
審査に要する期間は審査請求後、通常1~2年程度ですが、早期審査の申請を行うことにより、2~6ヶ月程度に短縮することができます。
拒絶理由通知とは、特許庁が出願審査を行った結果、特許にすることができない理由があると判断した場合に、出願人に対して通知される書類をいいます。
拒絶理由通知には、特許を受けることができない理由が具体的に記載されていますので、出願人はその理由に対して反論したり、出願内容を修正したりすることができます。
意見書とは、拒絶理由に対して出願人が反論するための書類です。
補正書とは、拒絶理由を解消するために、明細書や特許請求の範囲の記載を修正するための書類です。
特許査定とは、特許庁審査官が出願審査を行った結果、出願内容を特許にすべきであると判断した場合に、出願人に通知される査定です。
特許査定の通知を受け取った後30日以内に特許料を納付することで特許権が発生します。
拒絶査定とは、特許庁審査官によって発せられた拒絶理由通知に対して出願人が応答しなかった場合、または意見書・補正書等を提出して応答したにも拘わらず拒絶理由が解消されなかった場合に、特許にすることができないとの最終判断として出願人に通知される査定です。
拒絶査定に対しては、その通知を受け取った日から3ヶ月以内に、拒絶査定不服審判を請求することができます。
拒絶査定不服審判では、3人又は5人の審判からなる合議体が、審査官の判断を改めて審理し、特許を認めるかどうかについて審決します。
拒絶査定不服審判とは、特許庁審査官が下した拒絶査定を不服として特許庁に対して審理を求める手続です。
拒絶査定不服審判は、拒絶査定の通知を受け取った日から3ヶ月以内に請求することができます。
拒絶査定不服審判では、3人又は5人の審判からなる合議体が、審査官の判断を改めて審理し、特許を認めるかどうかについて審決します。
国際特許出願とは、特許協力条約 (PCT) に基づき、1つの国際特許出願を行うことで、PCT加盟国全てに対し同時に出願したのと同じ効果が得られるという国際的な特許出願をいいます。
「 国際出願をすると、出願した発明に類似する発明が過去に出願された(公知となった)ことがあるかの調査(国際調査)が、すべての国際出願に対して行われます。
その際には、その発明が進歩性、新規性など特許取得に必要な要件を備えているか否かについて審査官の見解も作成されます。
もちろん、それらの結果は、出願人に提供されますので、出願人は、自分の発明の評価をするための有効な材料として利用することができます。」
(特許庁ホームページより)
実用新案法は特許法に準じる規定が多いため、主に異なる用語についてご説明します。
実用新案は、考案(新しい技術的なアイデアのうち、物品の形状、構造又は組合せに関するもの)、実用新案制度、実用新案法を意味する言葉として使用されています。
考案とは、一般には、工夫して考え出すことをいいますが、実用新案法では、「自然法則を利用した技術的思想の創作をいう」と定義されています。
発明との違いは、高度か高度でないかだけの違いですが、実用新案法での保護対象は、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」と規定されていますので、
簡単に言えば、
新しい技術的なアイデアのうち、物品の形状、構造又は組合せに関するものということになります。
実用新案法は特許法に準じたものとなっていますが、大きな相違点もありますので、違いにつきましては、特許と実用新案の違いをご参照下さい。
実用新案権とは、考案(新しい技術的なアイデアのうち、物品の形状、構造又は組合せに関するもの)を保護するために国によって付与される独占的権利です。
実用新案権を権を有するもののみが、その考案について独占的に実施することができます。
ただし、特許権と異なり、実用新案権者は、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権を行使することができません。有効でない権利が行使されて、相手方が損害を被るのを防ぐためです。
実用新案登録出願とは、考案について国(特許庁)に対し実用新案権の付与を求める手続をいいます。
実用新案登録出願の手続は特許出願の場合とほぼ同じであり、次の書類を特許庁に提出することによって行います。
・願書、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面
・実用新案登録出願の場合、第1年から3年分までの登録料を出願時に支払います。
実体審査無しで基本的には全て登録になるからです。
技術評価請求とは、実用新案権の有効性について特許庁に評価を依頼する手続きをいいます。
実用新案制度では、新規性や進歩性などの実体審査を行わずに登録されるため、権利の有効性を確認するために技術評価請求を行います。
技術評価書を提示した警告を行うことなく有効でない権利が行使されて、相手方が損害を被るのを防ぐためです。
技術評価請求は、実用新案登録出願後いつでもできます。また、誰でも請求できます。
意匠法は特許法に準じる規定が多いため、主に異なる用語についてご説明します。
意匠とは、物品等のデザイン(外観)のことです。
建築物や画像のデザインも意匠に含まれます。
物品の部分も意匠の対象となります。
意匠権とは、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする独占的な権利です。
意匠登録出願とは、意匠について国(特許庁)に対し意匠権の付与を求める手続をいいます。
意匠登録出願は次の書類を特許庁に提出することによって行います。
・願書、明細書、特許請求の範囲、図面
商標
法は特許法に準じる規定が多いため、主に異なる用語についてご説明します。
商標とは、事業者が自己の商品・サービスを他人のものと区別するために使用するネーミングやマークのことです。
商標権とは、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができる権利です。
商標登録出願とは、指定商品又は指定役務について、商標を独占的に使用する権利である商標権の付与を求める手続をいいます。
登録を求める商標および指定商品又は指定役務を特定する願書を特許庁に提出することによって行います。